トリック×ロジック回顧録第1回目。 練習問題「指差す死体」
~あらすじ~ 蒸し暑い図書館の視聴覚室で男が殺された。 死亡推定時刻から、二人の容疑者が浮かぶ。
この話自体は凄くシンプルなもの。 トリロジを進んで買うような探偵小説マニアなら初見で大体の推測は出来てしまうような簡単な内容と言っていいんじゃないだろうか。 しかし、これが初回だけあって苦戦した。 でも、この練習問題で「トリックは分かっているが、ナゾ、ヒラメキが出ない」というジレンマの最初に味わうことになる。
以下、ネタバレを含みます。 トリックのキモは犯行時には温度差があって出来ていた二つの部屋をつなぐ扉のガラスの霜が、死体発見時には温度差がなくなっていたので消えていた。 温度差があれば、被害者が死ぬ間際に霜を指でなぞってできたダイイングメッセージがわかるのが、しかし刑事(丸の内警部)が来たときには温度差が無くなっていて、判らなくなっていたというもの。
凄くシンプルで分かりやすいミニ探偵小説。 だったのだが、トリロジはそれを発見するゲーム。 この練習問題に限らないが、犯人は何回か小説を読めば探偵小説マニアならすぐわかる。
しかし、ナゾを発見するには、小説上に散りばめられたキーワードを元に小説に含まれたナゾを発見し、そのナゾと別のキーワードを組み合わせて「ヒラメキ」を発見しなければならない。 そして、さらにそのヒラメキのどれを「どの問に当てはめるか」が問題になる。
ナゾを発見し、ヒラメキを導き出すこと。 それが難しい。 正直、最初の想像とは結構違っていた。 それはキーワードの組み合わせが、そのキーワード単体の組み合わせだけでは駄目で、文脈まで考えなければならないことだ。
自分が苦労したのはこのヒラメキだ。 「ガラスが曇っていた」 いや、まあこのヒラメキ以外は不要なヒラメキ何ですけどね。
このヒラメキを出すには、 「右手人差し指~」「何かを書き残そうとした」 の二つのキーワードから 「ダイイングメッセージ?」 のナゾを出し、このナゾと 「ここだけ空調が壊れておりまして」 というキーワードを組み合わせなければならない。 つまり次の手順を踏む必要があるということになる。
キーワード「右手人差し指~」×キーワード「何かを書き残そうとした」=ナゾ「ダイイングメッセージ?」 ナゾ「ダイイングメッセージ?」×キーワード「ここだけ空調が壊れておりまして」=ヒラメキ「ガラスが曇っていた」
ダイイングメッセージも、ガラスの曇りも分かっているのに、この組み合わせがなかなか出なかった。 (もちろん、それ以後のナゾ・ヒラメキ出しに比べれば可愛いものだけど)
このように、トリックがわかるのに論理立ててロジックに照らし合わせてキーワードを選択しなければならない。 この面倒さゲーム性が、今後自分の探偵小説マニアとしての火をつけていった。